保育士の業務過多は大きな社会問題となっています。現在こういった問題を解消しようとさまざまな取り組みがなされる中、近年注目を集めているのがICT化です。今回は、ICTシステムを導入する園が増えるとともに、見えてきた問題点・課題に対して園でできるさまざまな取り組みを紹介します。
システムが役に立っているのは少数派!?
ICTシステム未導入の園にお勤めの方は、導入後の効果にどのくらいの期待をよせていますか?手書きの指導案やメモ書きでの情報共有、行事の度に行われる写真販売。これらすべてがパソコンやタブレットで管理できれば、保育士の業務負担はずっと減りそうに感じますよね。
実際、ICTシステムシステム未導入園にお勤めの方へのアンケートでは、7割の方が「役に立つと思う」と回答しています。しかし、いざ導入すると期待していたほどの効果が得られないケースもあるのです。むしろタブレット等の操作が不慣れであれば、かえって業務の負担が増したように感じるかもしれません。
すでにICTシステムを導入している園にお勤めの方へのアンケートでは「手書きでの書類作成が減った」「情報共有が簡単になった」などの回答が多かった反面「業務の負担軽減に役立っていると感じている」と回答した方は全体の2割程でした。
では、システムの導入によりある程度の業務が改善されたのに対し、保育士が負担に感じる理由はどこにあるのでしょうか。
役に立たないと思われているその原因は?
ICTシステムの効果が十分に得られない主な要因として「環境整備の不足」と「タブレットやパソコンの操作に慣れていない」という2点が挙げられます。ICTシステムを用意したもののWi-Fi等の通信環境に不備があると、システムの動作に問題が出ることがあります。そうしたとき、ICTシステムそのものに問題があると判断されてしまうことが多いのです。
また、保育士の仕事内容には指導案の作成や連絡帳への記入がありますが、こうした作業はもともと手書きで行っていたため、急にデジタルに移行しようとすると勝手が違い、やりにくさを感じることもあるかと思います。タブレット等の操作が不慣れな方にとっては、手書きの方が楽に早くできるため「時短には結びつかない」「負担だ」と感じることもあるのではないでしょうか。
また、クラスごとにタブレット等が配置されていない園は、ひとつの端末を複数人でシェアするため「気づいたときや手が空いた時間での作業」 がしにくくなります。子どもの午睡中にそういった作業をする方も多いと思いますので、端末の配置は各クラスに一台、理想をいえば一人一台を用意したいところです。
システムをしっかり活かせる環境づくりが大事!
ICTシステムを導入した後、スムーズに活用するためには、園内の環境づくりがひとつのポイントになります。ICTシステムはクラウド型のサービスが多いため、園内の通信環境によってその使い心地は左右されます。「タブレットの動作が遅くて仕事にならない」「せっかく入力した指導案が消えた」といった事態にならないためにも、園内の通信環境から整えましょう。システムの導入前からさまざまなサポートをするシステム会社もありますので、通信環境含めて不安に思うこと、導入のハードルとなり得ることを相談してみるのも良いかもしれません。
また、ICTシステムには登降園管理や指導案の作成・管理、保護者との連絡ツール等さまざまなコンテンツがあります。これらすべてを一度に導入する必要はないので、園や保育士のペースに合わせて小分けに導入していくのもよいでしょう。
環境整備と同じように、実際にシステムを使う保育士への事前周知とレクチャーの実施は、ICTシステムの活用において非常に重要です。本来、保育士の仕事をラクにしてくれるICTシステムですが、周知やレクチャーが不十分であれば、かえって業務の妨げとなってしまうこともあるため、事前にスケジュールを立ててしっかりと取り組むようにしましょう。
保育業界のICTシステム普及率はまだ低く、導入に対して慎重な面を見せる園や自治体もあります。しかしICTシステムは上手に導入すれば、現場で働く保育士がメイン業務である保育にゆとりを持って取り組めるようになるはずです。また、情報共有や周知、確認などもスムーズに行えます。
保育園でICTシステムを導入した場合に、システムが保育士の業務効率化に役立つか役立たないかは、導入前後の取り組み次第で大きく変わります。スムーズに導入できるよう、事前に園のネット環境や設備をしっかりと 把握し、問題となる点があればシステムを提供する会社に相談してみることをおすすめします。また、実際にシステムを使用する保育士にどのように説明するか、導入ペースはどうするかなど、詳細な点も計画的に進めていきましょう。