これまで紙ベースが主体だった保育園や幼稚園ですが、書類作成などの業務が大きな負担となっていました。ITCシステムは、保育士・幼稚園教諭の待遇改善や業務効率化に役立つシステムです。パソコンやタブレットなどを用いて、事務業務などをサポートします。本記事では、ITCを導入することで効率化できる業務について解説します。
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ICTシステムとは?
「ICT」とは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った略称です。日本語では情報通信技術を意味しています。インターネットを使った人と人・人と物とをつなぐコミュニケーションのことです。そして、ICTシステムは、インターネットを使って情報を共有したり、コミュニケーションを取ったりするシステムツールを指します。
同じような意味合いの言葉として「IT」が挙げられますが、ITとはInformation Technologyの略称であり、同じく情報通信技術を意味しています。ITは、コンピュータとデータ通信技術に関する広義的な意味合いで使われます。
ICTとITは同じ場面で使われることもありますが、国際的にはICTの方が普及しています。
ICT導入で効率化できる業務内容
保育園・幼稚園はICTシステムの導入で、業務効率が大幅に向上する可能性があります。以下に、ICTシステムで効率化できる業務の紹介をします。
園児の登降園管理
登園時には多くの園児と保護者が一斉にやって来るため、保育士にとって忙しい時間帯です。従来の紙やタイムカードでの管理は、正確な時間を把握しにくく、記載漏れが発生すると確認作業に手間がかかります。ICTシステムを導入することで、園児の登園・帰宅がリアルタイムで記録され、一目で把握できるようになります。
園児の情報管理
多くの園では、園児情報をファイルで管理していますが、書類が多くなりがちで管理が面倒です。ICT化により、健康状態や身体データ、アレルギーの有無などの大切な情報をシステム上で簡単に管理できます。
保護者からの情報提供
これらの情報を一括で管理できるため、必要な情報を探しやすくなります。また、職員間での共有がしやすく、情報の紛失防止にも役立ちます。クラス替え後の引き継ぎも容易になり、効率的に作業が進むでしょう。
職員の労務管理
職員の労務管理がICT化されると、勤怠管理が手間なくスムーズに行えます。出退勤管理や労働時間管理など、労務管理に関わる業務を効率化できます。正社員、派遣社員、パートなど雇用形態に違いがあっても、一覧でシフトを確認しやすく、残業時間のチェックも簡単です。
職員のシフト作成
シフト制を採用している園では、職員の希望と調整しながら何度もシフトを練り直す必要がありますが、シフトや有給休暇を簡単に編集、修正できます。システム上で一覧表を確認できるため、時間をかけずにシフト調整が可能です。
料金集計
ICTシステムの導入により自動計算が可能になり、集計時間の短縮やミス防止に繋がります。請求書や領収書の作成もデータ化した内容を元に出力できるため、安心して活用できます。
保護者へのお知らせやお便り配信
行事やクラスの出来事を保護者に知らせる際、電話や書類で伝える施設が多いですが、緊急時にはこれらの方法では時間がかかります。ICTシステムには、一斉にメールを送る機能やお知らせを配信する機能が備わっており、早急な対応が可能です。
連絡帳・排便・午睡記録
保育士は、連絡帳や排便の回数、午睡の記録を毎日取りますが、ICTシステムを使うことで業務が効率的になり、共有もしやすくなります。文章作成も定型文を活用することで時間が短縮できます。
ICTを導入するメリット
保育園でICTシステムを導入するメリットは多岐にわたります。以下に、主なメリットを詳しく説明します。
書類を簡単に作成できる
保育日誌や指導案などの書類作成は保育士にとって大きな負担ですが、ICTシステムの活用でその負担を大幅に軽減できます。システム上でテンプレートを活用できるため書類作成が楽になり、日付、気温、園児の登園記録などの情報も自動で入力されることがあります。
残業の削減・持ち帰り仕事の防止
手作業で対応していた書類作成や集計作業をICT化することで、業務効率が向上し、残業や持ち帰り仕事の防止につながります。これにより、保育士の働きやすい職場環境を作り出すことができるだけでなく、保育園運営のコスト削減も期待できます。
保護者と連絡がとりやすくなる
ICTシステムを導入することで、保護者に向けての一斉連絡や個別配信が可能になります。これにより、保護者とのコミュニケーションがスムーズになり、特に朝の忙しい時間帯に欠席や遅刻の連絡で電話対応をする必要がなくなります。
保育士同士で情報共有ができる
ICTシステムに情報が集約されることで、保育士同士の情報共有が簡単になります。また、保育士にアンケートを送ることも可能なため、行事や仕事に関する出欠の連絡や意見を募る際に便利です。これにより、職員間のコミュニケーションが向上し、チームワークが強化されます。
保育料や預かり料金の集計作業の負担・ミスが減る
登降園記録や登録情報をもとに自動で集計・計算が行えるため、お金の管理にまつわる負担が大幅に軽減されます。これにより、計算ミスが減り、保育士の緊張感も軽減されます。また、保護者の不安も軽減されるため、信頼関係の構築にも寄与します。
採用活動でのアピールポイントになる
保育士の転職活動において、保育以外の業務負担が少ないかを重視する人材も多いです。保育ICTを用いて業務負担の軽減に取り組んでいることは、保育園が採用を進めるうえで大きな武器となります。
監査での書類整理・提出の負担が大幅に減る
保育園の書類監査は気が重い作業ですが、ICTシステムの導入によってそれらの作業が簡単になり、記載もれも発生しにくいです。これにより、監査のために準備する時間が減り、残業時間の軽減にもつながります。
ICTを導入するデメリット
保育園でICTシステムを導入する際のデメリットは、下記の通りです。
経費がかかる
ITCシステム導入時に、備品の購入などの経費がかかります。しかし、ITC導入のための補助金を活用することで、導入費用を削減できます。ITCシステムを導入する際は、自治体などに相談をしてみるとよいです。
操作に慣れるまで時間がかかる
PCやタブレットの操作に不慣れなスタッフがいる場合、ICTを用いた業務に適応するのに時間がかかる場合があります。特に年配のスタッフは、電子機器の操作に不慣れなことが比較的多いため、業務のフォローが必要になるかもしれません。
ネット環境の整備が必要
施設にインターネット環境がない場合は、ネット開通からスタートしなければなりません。時期によってはインターネット開通工事の予約がとりにくいため、早めの準備が重要です。
保護者の理解が得られない場合がある
保護者によっては、ITCの導入に難色を示す人もいるかもしれません。ITCに関するわかりやすい説明を保護者に発信することで、理解を得られることがあります。
保育園・幼稚園ICTシステムを導入するときのポイント・選び方は?
幼稚園・保育園ICTシステムは、多くの企業が開発・販売を行っており、いざ導入しようと思ったものの選び方がわからないと悩む方も多いことでしょう。以下では、システムを導入する際のポイントや選び方を解説します。
導入目的を明確にする
「なんとなくよさそうだから」とシステムを導入すると、うまく活用できずにコストだけがかさんでしまう事態になりかねません。まずは「何のために導入するのか」「どんな課題を解決したいのか」という導入する目的を明確にすることをおすすめします。
その上で、必要な機能が備わっているシステムを選ぶとよいでしょう。
保育士や保護者の使いやすさで選ぶ
実際にシステムを使う保育士にとって使いやすいシステムを選ぶようにしましょう。タブレットやスマートフォンに対応していると持ち運びに便利です。
また、画面の見やすさや操作性も確認しておきましょう。パソコン操作が苦手な保育士でも直感的に使えるシステムであれば、宝の持ち腐れになることはないでしょう。システムは使いたいときにいつでも使えるように、通信環境や機器の準備をして環境を整えておくことも大切です。
さらに、幼稚園・保育園ICTシステムを導入する上では、保護者からの理解と協力が不可欠です。保護者にとって使いやすいシステムであれば問題ありませんが、そうでない場合には結局電話や紙での連絡が必要となり、二度手間になりかねません。
保護者の操作スキルはさまざまです。スマートフォン操作が得意な方もいれば、そうでない方もいます。どんな方でも使えるように、わかりやすいシステムを選ぶようにしましょう。
各種ICT化に対応しているかどうか
国は業務改善のためのICT化を推進しており、厚生労働省や文部科学省、各自治体はICT化に対する各種補助金を交付しています。また、内閣府からも企業主導型保育事業の助成金として「運営支援システム導入加算」を新設しています。
ICT化補助金制度を活用することで、導入時にかかる初期費用やサービス利用料、工事費などの負担を軽減できます。そのため、なるべくICT化補助金に対応しているシステムを選ぶことをおすすめします。
なお、補助対象や要件、最大補助金などは各自治体によって異なります。利用する際には、あらかじめ管轄の自治体の担当部署に確認しておきましょう。
セキュリティ対策が万全かどうか
幼稚園・保育園ICTシステムは、園児や保護者、職員の個人情報を管理します。そのため、セキュリティ対策は必須です。
中には、ICT化することで、セキュリティ面を心配する保護者の方もいることでしょう。システムを選ぶ際には「データが暗号化されている」「登録した端末からしかアクセスできない」「職員ごとにアクセスできる範囲を設定できる」など、セキュリティ対策が万全なシステムを選定しましょう。
まとめ
保育園や幼稚園におけるICTシステムの導入は、紙ベースの業務からの脱却を図り、業務効率化と職場環境の改善を実現するための重要なステップです。登降園管理や園児情報管理、職員の労務管理、シフト作成、料金集計、保護者への連絡、記録の管理など、多岐にわたる業務がICTにより効率化されます。これにより、保育士は書類作成の負担から解放され、残業や持ち帰り仕事が減少します。また、ICTシステムによって、保育料や預かり料金の集計作業のミスも減少するでしょう。一方で、ICTシステム導入には経費がかかり、ネット環境の整備やスタッフの操作習得に時間がかかる場合があります。しかし、ICTの導入は、長期的に見ると施設全体によい影響を与えることでしょう。