保育業界の抱える問題として広く知られているのは、保育士の人手不足です。保育士は子どもたちの命を預かる責任ある仕事でありながら、日々の業務負担も非常に大きく、その上給与も少ないことなどが問題視されています。今回は、保育園・幼稚園の人手不足の実情に加え、定着率アップのために押さえるべきポイントなどを詳しく解説します。
保育業界では慢性的に保育士不足
保育業界において長年問題視されているのが、慢性的な保育士不足です。「保育士が足りないのなら求人を出せばよいのでは?」と考える人もいますが、過酷な労働環境や給与の低さなどが原因となり、新しく入った保育士がすぐに離職してしまうといったケースが散見されるのが現実です。ここでは、保育士業界を悩ませる人手不足の実態について詳しく解説します。
保育士の有効求人倍率は高い水準で推移している
保育士の有効求人倍率は、ここ数年間だけを見ても約2.5〜3.5倍という高い水準で推移しています。保育園・幼稚園の数が多い都心部ではさらに深刻な人手不足が問題となっており、有効求人倍率は6倍以上にものぼるのが実情です。人材不足の要因のひとつには、保育士の定着率の低さが挙げられます。
従来までは「長く勤めるほど給与が上がる=施設の経営を圧迫する」といった考え方も根強く、定着率が高いことは必ずしもよいことではないと捉えられていました。しかし、保育士不足の深刻化によって定着率に対する考え方も見直され、最近では定着率を上げるためにさまざまな工夫を凝らす保育園・幼稚園が増えています。
若手保育士の定着率が低い原因とは
保育士の人手不足要因には、若手保育士の定着率が低いことが挙げられます。保育士として10年以上働いている人の割合は、全体の2割にも満たないのが現状です。早期に離職する若手保育士が多いのは、持ち帰りの仕事などが多く労働環境が過酷であること、給与が低いこと、教育環境が整っていないことなどが原因であると考えられます。
とくに教育環境については、保育現場においては「具体的な指導を受けるよりも若手保育士が自ら先輩保育士の姿を見て学ぶべきである」といった昔からの考え方が残っている施設も少なくありません。研修期間がなく、すぐに保育現場で働くということは若手保育士にとって非常に過酷な状況であり、現場での仕事や人間関係の悩みに発展するケースも多いです。
保育士が定着するために必要なこと
保育士の定着率を上げるには、働きやすい環境を整えることが重要です。以下では、保育士が定着するために必要とされる対策を3つ紹介します。
風通しのよい職場を作り上げる
保育士に限ったことではありませんが、良好な人間関係が築けていない職場には、人が定着しにくいです。とくに保育士には女性が多く、いわゆる女性社会であることから、人間関係が厳しいというイメージを持つ人も多いでしょう。
人間関係が良好で風通しがよい職場では、お互いを信頼しあって働くための工夫を積極的に取り入れています。保育士同士の食事会や法人内部活動のように、お互いを知る機会を設けることで、円滑なコミュニケーションをうながしています。
昇給制度を整える
保育士の給与が低いことは長年問題視されており、代表的な離職原因のひとつです。基本給を安定させることに加え、役職ごとの昇給制度をしっかりと整えることで、やりがいを持ってキャリアアップを目指すことにもつながります。
若手保育士の教育制度を充実させる
就職1年目・3年目・5年目などの研修実施はもちろん、日々の教育体制を見直すことで、若手保育士の業務への不安を軽減し、ストレスなく働ける環境が整います。人員配置に余裕を持たせて若手保育士のサポート役に回るスタッフを確保するだけでも、定着率アップに大きく貢献できるでしょう。
保育園・幼稚園がICTシステムを活用するメリット
保育園・幼稚園で働く保育士の業務は、園児たちの保育・教育だけではありません。日々の制作活動や行事の企画・準備はもちろん、保育計画の作成、連絡帳記入、保護者へのお便り作成などの書類業務も多いです。
保育時間に園児たちと向き合って過ごせるのは保育士だけですが、書類業務などはICTシステムを活用して負担を軽減することも可能です。ICTシステムの導入によって業務負担を減らせば、持ち帰り仕事の必要がなくなり、余裕を持って働けます。保育準備などにあてる時間も増えるため、業務効率アップにもつながるでしょう。
まとめ
今回は、保育業界が抱える人材不足や定着率アップのために必要なことに加え、保育園・幼稚園がICTシステムを利用するメリットについても解説しました。保育業界の人手不足の原因には、持ち帰り仕事などを含む過酷な業務内容や給与の低さ、教育制度が整ってないことなどが挙げられます。定着率アップを狙うには、風通しのよい職場を作るために食事会・法人内部活動などの機会を設けたり、昇給制度を整えたりすることが重要です。
また、ICTシステムの導入によって書類業務の負担を減らし、労働時間を見直すのも効果的です。業務の一部をインターネットやアプリに頼ることで、業務効率化につながるでしょう。保育園・幼稚園の管理職やスタッフとして働く人は、今回の記事をぜひ参考にしてください。