子どもたちが安全に楽しく過ごせるよう、保育現場は忙しなく動いています。だからこそ、効率化できる部分は少しでも業務を効率化したいものです。近年は、保護者との連絡をスムーズにするため、ICT化が注目されています。しかし、導入にはいくつか注意点もあるので、この記事でICT化の利点と導入時のポイントについてくわしく解説します。
保護者への連絡をICT化するメリット
「ICT化すると保育がどのように変わるのかわからない」という声もありますが、保護者との連絡手段をICT化することには、大きなメリットがあります。具体的な事例を挙げて考えてみると、その効果が明確になるでしょう。
連絡の手間が省ける
登降園時間帯の欠席連絡がアプリを通じて行えるようになることで、朝夕に保育者が電話対応をする必要が大幅に減少します。この時間は子どもたちに集中することができ、保育の質向上につながります。
また、連絡帳がデジタル化されることで、子どもに「連絡帳を早く出しなさい」と急かす場面が減り、保護者も確認作業をスムーズに行えるようになります。さらに、紙の連絡帳でありがちな「入れ忘れ」や「間違ったクラスの連絡帳を入れてしまう」といったミスも解消されます。
写真の共有がしやすい
ICT化により連絡帳に写真を使えるのも大きなメリットです。文章だけでは伝えきれない情報も、写真を添えることでかんたんかつ的確に伝えられます。
たとえば、子どもが楽しんでいる様子を写真で共有すれば、保護者はその瞬間をリアルに感じ取ることができ、保育への理解や信頼感が深まります。
入力のタイミングも柔軟になり、午睡中だけではなく夕方の静かな時間帯でも作業できるため、保育者にとっての負担も軽減されます。
一斉配信機能で情報共有しやすい
今まで手間がかかっていた文書の作成や配布作業も一斉配信機能で効率化できます。アンケート配布や集計もアプリを通じてかんたんに実施できるため、事務作業が大幅に削減される点も重要です。
さらに、ドキュメンテーション機能を活用することで、日々の記録をお便り代わりに活用し、情報共有をより充実させることも可能です。
保護者への連絡方法と手段の決定時に気をつけたいポイント
連絡方法には大きく分けて、即座に情報共有ができる「同期型(対面・電話)」と各自のタイミングで返答できる「非同期型(連絡帳・アプリ)」の2つがあり、さらに「対面」「電話」「連絡帳」「アプリ(ICT)」の4つに細分化できます。
保護者への連絡方法について
対面は、保護者との密なコミュニケーションが取れる一方で、時間がかかり過ぎてしまうことがあるため、全ての保護者に対応するのが難しいことがあります。電話は比較的伝わりやすいものの、連絡がつながらない場合や行き違いが発生することが多く、時間と労力がかかる場合もあります。
連絡帳は、手書きでのやり取りが温かみを感じさせるものの、時間的な制約や手間がかかることが問題となります。アプリ(ICT)の場合、連絡が確実に行き渡り、未読の保護者にのみ追って連絡をすることができる便利さがありますが、専用のアプリが必要となる点がデメリットです。
このように、それぞれの連絡方法にはメリットとデメリットが存在します。そのため、連絡の種類・内容によって適切な連絡方法が変わります。
連絡方法を決めるときは保護者に過度な負担をかけないよう注意する
保護者への連絡方法を選定する際、最も重要なのは保護者の立場や状況に配慮した選択をすることです。たとえば、病気で欠席する際に電話で連絡を求めるよりも、ICTシステムを活用したほうが、保護者の負担を軽減できる対応となります。
病気の子どもを抱えた保護者は、病院への連絡や仕事の調整など多忙な状況です。そのため、病欠の連絡を朝のうちにかんたんに済ませてもらい、落ち着いてから電話で詳細を確認するほうが適しているといえます。
また、連絡帳に関しても、手書きが温かみがあると考える園側の意図もありますが、手書きにこだわるあまり、保護者が負担を感じてしまうことがないよう、ICTシステムを活用した連絡方法を取り入れるのもおすすめです。
このように、園側の都合を優先するあまり、保護者に過度な負担をかけてしまわないよう、適切な方法を選びましょう。
導入にあたって注意すべき点は?
ICTシステムを導入する際には、ただ導入して終わりではなく、その後の活用が成功の鍵を握ります。そのため、導入の際に注意すべきポイントをしっかり押さえておくことが重要です。
保護者へ導入の目的をしっかり伝える
システムを利用するのは、保育者だけではないことを忘れてはいけません。システムの導入目的を保護者に十分に説明せずに進めると「先生たちが仕事を楽にする(手抜きする)ためではないか」と誤解される可能性もあります。
導入目的はあくまで「保護者と正確に情報を共有し、よりよい保育を実現すること」をていねいに説明しましょう。この目的を共有することで、保護者もシステムの価値を理解し、協力的な姿勢をとりやすくなります。
導入前にルールを厳密に作らない
ICTシステムの導入初期段階では、あまり厳密なルールを作りすぎないようにしましょう。最初から厳しくルールを設定すると、せっかくのシステムの柔軟性や情報共有の促進といったメリットを生かせません。
まずは、パソコンやICTが得意な保育者のクラスなど、小規模から試験的に始めるのがおすすめです。試行錯誤を重ねる中で、園全体に適した運用方法やルールが自然と見えてくるでしょう。
保育者同士で教え合う環境を作る
園内には、ICTシステムを得意とする保育者と不得意な保育者が混在している場合が多いです。このような状況では、保育者同士で活用方法を教え合える環境を整えることが重要です。
システムにくわしい保育者がうまく活用している事例を共有したり、困っている保育者が気軽に質問できる雰囲気を作りましょう。また、全員が無理なく使いこなせるよう、定期的な研修を実施することも効果的です。
まとめ
ICT化は単なる効率化ではなく、保育者、保護者、そして子どもたちのコミュニケーションを強化し、信頼関係を築くための大きな一歩ともいえます。また、業務が効率化されることによって、保育者は子どもたちと過ごす時間をより多く確保できるようになります。子どもひとりひとりとの関わりが深まることで、保育の質がさらに向上し、保護者にとっても安心感が増します。これからの保育現場において、ICTの活用は欠かせないツールとなるでしょう。