保育園や幼稚園でタブレットやアプリなどのデジタルツールを導入したいと考えている園は多いでしょう。国や地方自治体では、こうしたICT化を進める園を応援するため、導入にかかる費用の一部をサポートする補助金制度を用意しています。ここでは保育園・幼稚園が使える主要な補助金をわかりやすく説明します。
保育所等におけるICT化推進等事業(ICT補助金)
ICT補助金は、保育現場で最もよく使われている補助金です。保育士さんの仕事を楽にして、子どもたちとより多くの時間を過ごせるようにすることを目的としています。現在はこども家庭庁という国の機関が管理しています。
補助金の仕組み
補助金の仕組みはとてもシンプルです。全部で、保育計画・記録機能、登降園管理機能、保護者連絡機能、キャッシュレス決済機能の4つの機能があり、機能ごとに補助金がもらえる仕組みになっています。
補助金額の内訳
ひとつの機能だけなら20万円、2つなら40万円、3つなら60万円、4つ全部なら80万円がもらえます。さらに、タブレットやパソコンなどの機器も一緒に買う場合は、プラス50万円が追加されます。つまり最大で130万円の補助が受けられるのです。
負担割合
補助率は、国1/2、市区町村1/4、事業者1/4という3者分担になります。たとえば100万円のシステムを導入する場合、国から50万円、市区町村から25万円の補助を受け、園の実際の負担は25万円だけです。結果的に事業者は75%の支援を受けることになりますが、補助金の出所は国と自治体の2つに分かれています。
対象施設と注意点
この補助金は認可保育所、認定こども園、小規模保育事業などの多くの施設が利用できます。ただし、実際の申請は都道府県や市町村を通して行うため、地域によって申請時期や詳しい条件が違うので注意しましょう。必ず自分の園がある自治体に確認してください。
IT導入補助金(経済産業省)
IT導入補助金は、経済産業省という国の機関が運営する補助金です。保育園・幼稚園だけでなく、レストランや小売店、病院などさまざまな業種の中小企業が利用できる制度です。ICT補助金と比べて補助金額が大きいのが最大の特徴です。保育園・幼稚園がこの補助金を使うには、まず会社の規模が条件を満たしている必要があります。
社会福祉法人が運営する園の場合は職員300人以下、株式会社や合同会社が運営する園の場合は資本金3億円以下かつ従業員300人以下という条件があります。公立の園(市や県が直接運営している園)は対象外です。補助金の金額は現在の通常枠では、プロセス数によって変わります。1プロセス以上では5万円以上150万円未満、4プロセス以上では150万円以上450万円以下の補助が受けられます。補助率は条件によって変動し、1/2以内または2/3以内です。
たとえば、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の30%以上である場合は、2/3以内の補助率が適用されます。IT導入補助金では「IT導入支援事業者」という専門の会社がサポートしてくれます。これらの会社は国に登録されており、システムの提案から申請書類の作成まで手伝ってくれるので、初めて申請する園でも安心です。
そのほかの補助金制度
ICT補助金やIT導入補助金のほかにも、保育園や幼稚園が使える補助金はあります。ここでは代表的な制度や申請のときに気をつけたいことを紹介します。自分の園に合う制度を知っておくと、よりよい設備やシステムを取り入れるきっかけになります。
主な補助金制度
まずは、企業主導型保育事業助成金です。これは会社が社員のために作る保育園などを対象にした制度で、ICTシステムの導入にも使えます。企業主導型の園を運営している場合は検討するとよいでしょう。
次に、東京都では独自の制度として幼児教育の質の向上のためのICT化支援事業補助があります。これは都内の私立幼稚園を対象にしていて、ICTを取り入れるときに役立ちます。地域ごとの制度なので、東京都以外の園は利用できませんが、ほかの自治体でも似た取り組みを行っている場合があります。
さらに、デジタル田園都市国家構想交付金もあります。これは国の制度で、地域のデジタル化を進めるための交付金です。条件を満たせば保育園や幼稚園のICT化にも使える可能性があります。
このほか、各都道府県や市区町村が独自に行っている補助金制度もあります。内容や金額は地域によって大きくちがうため、自治体の公式サイトを見たり、直接問い合わせたりすることが大切です。
補助金申請の注意点
補助金を使うときには、いくつか注意が必要です。まず、補助金には利用できる期間が決まっています。多くは年度ごとで区切られ、4月から翌年3月までや4月から11月までといった期限があります。導入や支払いが期限を過ぎると補助が受けられなくなるので、事前に確認しましょう。
次に、補助金は基本的に後払いです。園がいったん費用を支払ったあとで、補助金が振り込まれる仕組みになっています。そのため、最初に資金を準備しておく必要があります。
申請には書類も欠かせません。見積書や事業計画書、導入効果を示す資料などを求められることがあります。申請期限は厳しく決まっているため、余裕をもって準備することが大切です。
もし迷う場合は、補助金の実績が多いICTシステムの事業者に相談するのもおすすめです。申請のサポートから導入後のフォローまで行ってくれる会社もあり、スムーズに進められます。
最後に、制度は毎年内容が変わることがあります。必ず最新の情報をこども家庭庁や経済産業省、自治体の公式サイトで確認しましょう。
まとめ
保育園・幼稚園のICT導入には、国や自治体が用意した複数の補助金制度を活用できます。ICT補助金は保育現場に特化した使いやすい制度で、IT導入補助金は補助金額の大きさが魅力です。どちらも園の負担を大幅に軽減してくれる心強い制度です。ただし、自治体によって実施状況や申請条件が異なるため、まずは園のある地域の自治体に確認しましょう。補助金をうまく活用してICTシステムを導入し、保育士さんの負担を軽くして、子どもたちとより多くの時間を過ごせる環境を作りましょう。