「求人サイトやハローワークに募集をかけたけどなかなか人材が集まらない」あるいは採用したものの長く務めてもらえないといった経験はありませんか。行政が掲げている保育士不足の対策の中で、近年注目を集めているのがICTシステムの導入です。「ICTシステムでどうやって保育士が集まるの?」そう感じた方はご一読ください。
日本の保育士不足が深刻化している
厚生労働省が2015年に打ち出した「保育士確保プラン」では「保育士試験の年2回実施」や「保育学生に対する就職支援」等で保育士不足を改善する仕組みづくりを行いました。
また保育士の給与面の問題も処遇改善事業等を継続的に行っています。これらの施策や事業はある程度の効果はあったものの、保育業界の人材不足は慢性化しています。厚生労働省の発表によると、2018年の時点での保育士登録者数は約154万人です。その154万人の内、保育園等の社会福祉施設で働いている数は約59万人です。
つまり保育士登録者の内、潜在保育士の数は6割超の約95万人になります。対して不足している保育士の数は約7.4万人です。保育士不足解消のためには潜在保育士の活用も大事なポイントとなります。また、保育士の離職率においては10.3%(民間施設では12%)となっているほか、保育士として就労した8割以上の方が5年以内に辞めてしまいます。こういった離職率の高さや勤続年数の低さも保育士不足の大きな要因のひとつとなります。
さらに待機児童の受け皿として保育所等の施設の数は年々増加傾向にあります。保育士不足解消のためには単に保育士の数を増やす取り組みだけではなく、保育や子育て、保育士の働き方等さまざまな社会問題を総括的にとらえて対応する必要があります。
業務量の多さも人手不足の原因
毎年、4.5万人以上が保育士資格取得のため、大学や専門学校等の養成校に進学しています。学生の多くが「保育者になることが夢だった」という理由で保育職で働くことを目指しています。そこには「子どもが好きだから」や「保育という仕事に対する憧れ」等の思いがあるでしょう。
一方、保育士が保育施設等を退職する理由は「仕事量が多い」「労働時間が長い」といった理由が半数以上を占めています。つまり、労働環境が改善できれば退職する保育士の数も大きく減るということです。保育士の仕事は子どもと向き合って行う業務だけでなく、書類作成や製作の準備、保護者との連絡のやり取りなど、多岐にわたります。
またこれらの仕事は午睡中や子どもたちの登降園前後にすることがほとんどです。とくに壁面や製作準備等においては、指導案とは違い個人情報漏えい等のリスクがないので、持ち帰り仕事が常態化している園も少なくありません。日々の業務量の多さや拘束時間の長さも、人手不足の大きな原因となっています。
現場の負担を減らして人手不足を解消しよう
保育現場の負担を減らす取り組みとして近年推進されているのが保育業務のICT化です。ICTシステムの導入で保育士の働き方は大きく変わります。
たとえば、保護者アプリを導入することで、朝の欠席連絡の電話がなることはほぼなくなります。欠席やお迎え時間の予定変更等、保護者からの連絡をまとめて確認できるほか、園からのお知らせや園だより等の配布物もデータで一斉送信できます。日誌や指導案等の作成に関して、各書類の重複項目は連動しているので、同じ文言を複数回入力する必要はありません。日付や天気、園児名等を何度も記入する必要がなくなります。
またデータ保管なので紙のようにかさばることがありません。保護者との連絡帳のやり取りもチャットやメール等のアプリでできます。保護者からの記入があれば通知が入るので、毎朝連絡帳の記入チェックをする必要もなくなります。行事の度に職員総出でしていた写真販売も、システム導入後はスマートフォンで撮影するだけになります(各機能においてはシステム会社や契約内容によって多少異なります)。
ICTシステムの導入は単に保育士の労働環境の改善だけではなく、保護者アプリ等保護者に対する新たなサービスとしても注目を集めています。保育士の業務量が多いぶん、それぞれの業務を少しずつ簡略化し、効率よくすることで、保育士の仕事全体の業務改善になります。また、保育士にゆとりが生まれることで、これまで以上に子どもたちとの関わりにもいい影響があるのではないでしょうか。
ICTシステムの活用は、保育現場での人材不足解消につながります。今回ご紹介したシステム以外にも、登降園管理や情報共有、保育園に特化した会計ソフト、園バスに関するアプリなど多くのコンテンツがあります。これらは保育士の働き方に大きな変化を与えるものとなります。新卒の方や転職される方の就職先選びのポイントとして、ICTシステムの有無があることは一つの基準となっています。保育士不足解消のカギとなるICTシステムを活用して、人手不足を解消しましょう。