保育園・幼稚園では、ICTシステムなどによる業務のICT化が進んでいます。しかし、どの業務がICT化によって効率化できるのかイメージしづらいこともあるでしょう。そこで、今回はICT化によって保育園・幼稚園で効率化できる業務とできない業務、また、ICTシステムを導入するメリットや課題についてご紹介します。
保育園・幼稚園システムでどんな作業が効率化できるか
保育士の業務負担や離職率の課題を改善するために、システム導入ではどのような作業が効率化できるのかご紹介します。
■園児の登降園管理
これまで園児の登降園打刻は、紙に手書きで打刻時間を記載したり、タイムカードで管理したりしている園もあるでしょう。正確な時間を把握できなかったり、記載漏れなどがあったりした場合に確認する作業にも手間がかかってしまいます。そこで園児の登降園打刻をICT化できたら、リアルタイムで正確な時間を記録されて、一目で把握することが可能となります。
■園児の情報管理
園児の情報を紙で管理している園が多いかと思いますが、システムを入れることで、基本情報やアレルギー、保護者の連絡先や活動記録、身体データなど、一括で管理できるのです。職員間でも共有しやすく情報の紛失、散乱の心配もないでしょう。
■職員の労務管理
職員の出退勤や時間外労働の管理、給与ソフトなど労務管理がICT化されると勤怠管理を手間なくスムーズに行なうことが可能です。
■職員のシフト作成
シフト作成の際は、国が設けた配置基準をもとに、子どもの人数に合わせて保育士の必要人数を調整する必要があります。ICT化すると、必要配置人数に対して人員が不足している場合は、一覧表で確認でき、時間をかけずに調整を行うことが可能となります。
■保育料の計算
無償化により、各施設で保育料の計算が必要な園もあれば、不要な園もあるようですが、幼稚園や都道府県に届け出をしている認可外保育園などは無償化される金額に限りがあるため、保育料の計算が複雑になり、時間がかかるケースもあるのです。ICTシステムを活用することで、延長保育料やおむつ代、行事代金などスムーズに算出できます。
■保護者へのお知らせやお便り配信
行事やクラスの出来事などを保護者へお知らせする際に、電話や手紙で伝える園は多いかもしれません。しかし、感染症対策など緊急の対応が必要な場合は、このような伝達方法では時間がかかるケースがあります。その点ICTシステムを活用すると、保護者への一斉メールやお便り配信、連絡帳の記載などの機能が備わっているものもあるため、早急な対応を取ることができます。
■保育士の週案・日案の作成
保育士の方が、月案・週案・日案を作成し、子どもたちの活動のねらいや流れを確認する園が多いでしょう。手書きで行うこともあり、書いたり消したりと修正に時間がかかってしまうことも考えられます。ICTシステムを活用すると、パソコンやタブレットで入力作業を行うため、修正も簡単にできますね。
実際にどのような効果があったのか
ICT化をすることで、保育者間の情報共有のしやすさや、文章を書く量・書く作業が減ることへのメリットを実感する方が多く、具体的な保育者の声としては、子どもの安全確保に対して安心感が増し、保育に集中できる時間が増えたこと。また、ツールに慣れるまでは大変だったけれど、慣れたらスマートフォンで操作できる点が楽だと感じるようになったこと。
そして、撮った写真が自動でアップロードされるのが便利なことや、3才以上児のクラスでは、保護者・保育者ともに書き物の量が減って楽になったという声が多くありました。業務効率化にともなって、残業時間も減り離職率も少なくなってきています。
システムの導入には課題もある
一方で、システム導入には課題もあります。保育現場にICT化を導入するためには、システムを使用する職員と保護者の方に理解を得る必要があるのです。しかし、職員の中には「パソコンの操作方法が分からない」「どう使えばよいか分からない」などとICTに対する抵抗感や苦手感を持ってしまう方もいます。
また、欠席の連絡などは保護者の方にスマートフォンを操作してもらうため、場合によってはうまく使いこなせないこともあります。ICTの活用に対して「難しそう」「かえって大変そう」というイメージが先行してしまい、理解を得にくくなってしまうということが大きな課題のひとつです。そのほか、インターネット環境やパソコンの端末が少ないという環境課題もあります。
以上、保育園・幼稚園システムを導入した場合の効率化や課題をご紹介しました。今後も保育現場ではICT化が広まっていく傾向があります。導入費用や環境、操作方法などに対しての課題はあるものの、保育士の負担の軽減という大きなメリットがあります。子どもたちとの向き合う時間も増え、保育の質の向上にもつながるのです。ぜひこの機会に正しい知識を身に付け、理解を深めたうえで導入するとよいでしょう。