保育の現場では、保育士の負担軽減のためにICTシステムの導入を検討する園が増えてきています。沢山のメリットが期待できる保育園システムですが、メリットだけではなく導入における課題も多く考えられます。そのため、なかなかICT化へ進まない園がある事も現状です。ICT化が進まない理由や課題は以下のようなものが挙げられます。
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説明や理解が必要
保育園システムの導入には、システムを実際に使用していく職員や保護者の理解と協力が必要になってきます。スマホやパソコンが普及しているとはいえ、「どのように操作していけばよいかわからない」など、苦手感や抵抗感を抱く人や、職場にICTについて詳しい人が全くいなくて上手く使いこなせないという事も起こりえます。ICT化に対して「使いこなせる自信がない」「かえって時間がかかるのでは?」という思いから、なかなか理解を得にくいというのも大きな課題のひとつだと言えるでしょう。
ペーパーレス化に対しての説明
連絡帳や園からのおたよりなど今まで手書きだったものがシステム化されると、『温かみが感じられない』『事務的な感じがする』など嫌悪感や抵抗感を抱く保護者も少なくありません。ペーパーレスに対して保護者に理解してもらう事がシステム導入の大きな課題と言えるでしょう。
機能に関する説明
システム化になると、登降園の時間も1秒単位できっちり管理されます。そのため今まではお迎えの時間が少し過ぎてもそこまで厳しく管理されていなかった園でも、システム管理となると1秒過ぎただけでも延長料金が発生するといった事が起こってきます。保護者には事前にそういったことをしっかりと説明しておかないと後でトラブルの原因となってしまうので注意が必要です。
職場環境の整備
システムを導入していく上で環境面でも課題はいくつか考えられます。詳しく見ていきましょう。
インターネット環境がない
現状、インターネットの環境がないとICTシステム導入は難しいでしょう。いざ、環境を整えようとしても機器の選定・購入やインターネット回線の契約など細かな手続きが必要になります。手間や費用がかかると躊躇して、なかなか導入に至らないという事もあるかもしれません。
使用できる端末がない(少ない)
保育システムには、パソコンやタブレット端末を使用するものがほとんどです。作業に使用できる端末の数が十分でないと、システムを導入しても効率よく業務を進める事が出来ません。また、端末の数が少ないと故障や不具合が起こった場合に代用機種の用意が整うまで作業が滞る可能性があります。
端末の設置場所が取れない
システムを導入する際に専用の機器等の設置が必要です。そのためスペースが限られている小規模保育園や企業内保育室などでは、端末を設置できる場所を十分に確保出来ずシステム導入に至らないという場合もあるようです。
一時的に業務が増える
ICTシステム導入の前後には、通常業務に加えて次のような業務が一時的に発生します。専任の事務担当がいれば良いですが、いない場合は保育士が保育の合間をぬって作業しなければならず一時的とはいえ負担が大きくなることが予想されます。
ICTへの切り替え作業
今まで紙の書類で管理していた様々なデータを端末に取り込む作業や・初期入力・管理体制を整える等の業務が一時的に必要となってきます。
使用する職員が操作を覚え、慣れていく
保育システムは比較的操作が分かりやすいものが多く、パソコンやシステム操作が苦手な人でも安心して扱えるようになっています。それでも慣れるまでは操作に戸惑ったり時間がかかることが予想されます。職員への指導や共有を始め、操作が分からなくなった時にいつでも確認できるようなマニュアルを作成し誰でもすぐに見られるようにしておく等の業務が始めのうちは必要になってきます。
保護者への周知・説明
園で初めてシステムを導入する際には保護者へも理解を概要や使い方の説明をしていく必要があります。使い方を記した資料を配布したり、場合によっては一人ひとりに口頭での使い方の指導が必要になる場合もあるでしょう。全員に浸透していくまでにかなり時間や労力が必要となってくることが予想されます。
定期的な見直しやフィードバック
システムを導入してしまえば、安心かというとそうではありません。導入後も運用していく中で不具合や使いにくい所があれば調整が必要だったり機能面で要望が出てくることも予想されます。そのため、職員間で定期的に意見を共有して機能を見直したり、提供している企業へのフィードバックを行い改善してもらうと良いでしょう。
保育現場のICT化は今後ますます広がっていくでしょう。まだまだ課題もありますが、それぞれの園で何を解決していきたいのかを明確にして導入・運用していけば業務負担を大きく減らすことが可能です。業務量が減っていけば子どもと向き合う時間も増えて、保育の質が上がり保育士にとっても働きやすい職場にしていくことが出来るでしょう。ぜひこの機会に保育現場のICT化についての正しい知識を身につけて理解を深めていってください。