近年、保育現場での登降園管理をICT化する動きが加速しています。従来のアナログな管理方法では手間やミスの原因となることも多く、効率化が求められてきました。しかしICT化により、保護者と施設双方の負担軽減や正確な管理が可能になるでしょう。本記事では、登降園管理のICT化によるメリットや導入のポイントについて解説します。
登降園管理業務とは
登降園管理業務とは、幼稚園や保育園などの施設で、園児の登園および降園状況を正確に把握し、安全を確保するための重要な業務を指します。従来、この管理は手書きの記録やタイムカードといったアナログな方法が主流でした。
しかし、これらの方法には限界があり、とくに多くの園児が一斉に登園・降園する時間帯では、混雑による確認ミスや情報の共有不足が課題となっていました。実際、欠席確認が適切に行われなかったことが原因で、園児が送迎バスに置き去りにされ、重篤な熱中症により死亡する痛ましい事故も起こっています。
このような悲劇を繰り返さないためにも、運用体制の見直しの必要性が叫ばれています。登降園管理で大切なポイントは「未連絡の欠席状況の把握」「職員間の情報共有」「出欠確認の突き合わせ」の3つです。
これらの課題に対応するため、最近ではICTを活用した登降園管理システムが注目されています。このシステムでは、保護者が園児の登園や降園をスマートフォンやICカードでかんたんに記録できるほか、職員はリアルタイムで出欠状況を確認することが可能です。
しかし、システム導入だけでは十分ではありません。管理業務の根幹には、職員全員が責任感を持ち、運用ルールを徹底することが不可欠です。施設ごとに課題を洗い出し、アナログ・デジタルを問わず、より安全で効率的な管理方法を模索する必要があるでしょう。
登降園管理業務をICT化するメリット
保育現場において、登降園管理業務は日々の重要な業務のひとつです。近年は、登降園管理業務をICT化する動きが広がっています。本記事では、ICT化による5つのメリットを詳しく解説します。
登降園の時間管理が楽になる
ICTシステムを導入することで、登降園時刻をかんたんに打刻・記録できるようになります。これにより、手書きで記録する際に発生しがちな「記入漏れ」や「記入ミス」を防げます。保育者が記録業務にかける時間を大幅に削減でき、子どもとの関わりに集中できる環境を整えることが可能です。
子どもの「今」の人数をリアルタイムで把握
従来のホワイトボードやノートでの管理では、園内の子どもの人数をリアルタイムで正確に把握するのは難しいものです。しかし、ICTシステムでは、各クラスの出席状況が即座に更新され、全職員が同じ情報を共有できます。これにより、保育士間の連携がスムーズになり、子どもの安全管理が向上します。
延長保育料金トラブルの回避
延長保育料金に関連するトラブルは、保育施設で頻繁に起こりがちです。ICT化された登降園管理では、保護者自身が打刻を行い、その時刻をその場で確認できます。この透明性により「延長時間を過ぎたかどうか」といった認識の違いによるトラブルを防ぐことが可能です。
業務の大幅な負担軽減
ICT化により、登降園情報はシステム上で自動的に帳票や請求書類に反映されます。これまで紙ベースで行っていた手作業の転記や計算が不要となり、業務効率が大幅に向上します。たとえば、出席簿や保育料の自動作成が可能になるため、事務作業の負担を大幅に軽減できます。
業務の見える化を実現
ICT化は、保育現場の業務を可視化する第一歩です。子どもの在園時間や保育士の業務内容をデータとして把握できるため、公平な業務分担が可能になります。また、効率的な時間管理やノンコンタクトタイムの確保を実現することで、職員全体の働きやすさも向上します。
登降園管理システムを導入する際のポイント
保育園や幼稚園において、登降園管理システムの導入は、園児の安全管理や業務効率化に大きく貢献します。しかし、多くのシステムの中から園に最適なものを選び、導入後もスムーズに活用するためにはいくつか注意点があります。以下に、導入を検討する際の重要なポイントをまとめました。
園にあった打刻方法を選ぶ
登降園管理システムには、タブレット端末に触れるタイプやICカードを利用するタイプなど、さまざまな打刻方法があります。それぞれの園の運営形態や利用者の利便性を考慮し、最適な方法を選択することが大切です。
たとえば、ICカードを利用する場合、カードを忘れたり紛失したりした際の代替手段をあらかじめ用意し、保護者や職員に周知しておく必要があります。
延長保育の時間設定ができるか確認
多くの保育園では、通常の保育時間の前後に延長保育を提供しています。登降園管理システムを選ぶ際には、園の延長保育時間に対応した柔軟な設定が可能かどうかを確認しましょう。これにより、延長保育の時間管理が正確になり、保護者への利用料請求もスムーズになります。
記録データの出力機能を確認
登降園管理システムは、園児の登降園時間や出欠データを管理するだけではなく、これらのデータを紙やPDF形式で出力できる機能が求められます。
自治体への報告や帳票作成の際に、記録データをかんたんに出力できれば、業務負担が軽減され、効率化が期待できます。この機能の有無は、導入前にしっかりと確認しましょう。
導入後のサポート体制を重視
システムを導入した後、適切に活用するためには充実したアフターサポートが重要です。保育士やスタッフの中には、PCやIT機器に不慣れな人もいるため、誰でもかんたんに操作できるのが理想的です。
また、システムはほぼ毎日利用するものなので、いざというときに使えなくては意味がありません。万が一のトラブルや疑問点に迅速に対応してくれるサポート体制が整っているかも確認しましょう。
まとめ
登降園管理業務をICT化することで、保育現場の業務効率が大幅に向上し、ミスやトラブルを減らすだけではなく、職員の負担軽減や子どもの安全性向上にもつながります。しかし、登降園管理システムを導入する際は、システムの選定や運用において注意すべき点を押さえることが重要です。園の特性にあったシステムを選び、導入後もスムーズに運用するために、必要な機能やサポート体制をしっかり確認してから導入を進めましょう。